失われた時を求めて

読書に始まる自伝的ブログ

『マルチの子』(西尾潤、2021)

保険屋時代、ちょうどマルチ関係で色々あったときに書店で出会い、手に取った本です。

 

主人公の女性はよくいそうな大人しく真面目な人なのですが、"マルチ商法"の世界に居場所を求め、成長を実感し、壊れていく様を描いた小説です。はじめに属しているネットワークビジネスの会社は、現代社会でいうかつてのジャパンライフのような会社で、磁気が身体に作用するマットレスを売っているんですが、最終的に仮想通貨のいわゆる"ハメコミ"のような上場詐欺の商売に手を出し崩壊していくストーリーです。

 

保険屋という商売も、ネットワークビジネス的な側面があって、ある一定額の売上を達成するととれるタイトルという"名誉"のために、自爆営業をしたり、田舎の親族に頭を下げに行く様子を思い出します。人間はお金なんかよりも"名誉"というニンジンがあれば、壊れるまで動けるんだなと、その世界にいくとわかるんですが、それを小説としてリアリティのある追体験ができる作品でした。

 

この本を読んで思い出すのは、某健康食品系のネットワークビジネスとの関わりです。色々あってそれを生業としている人と知り合ったのですが、肌がキレイでやたら目のキラキラしたデブだなと思った記憶です。親切ですし、サービス精神旺盛で"良い人"ではあります。私はかなり性格が悪いのと、営業マン・文学青年的な人間への興味から、その人の裏に何かあるなと嗅覚が働き、本質を知りたいなと思いました。しかし本質に迫る質問には、フィルターを通したキレイな言葉でしか返さない、「食えない人だな」と感じた第一印象でした。そんなこんなで薄くLINEでメッセージのやり取りをしばらくしていたのですが、営業先の近くでホームパーティーをやっていると聞き、たまには誘いに乗ろうと思って参加しました。想像通りの会で、ご飯は美味しかったなと覚えています。主催の彼から、感想を聞かれて「今日来てたあの子がかわいいですね」みたいな軽口を叩いて帰ろうとしていたのですが、「じゃあセッティングするから紹介するよ」と返し刀で切り込まれてしまいました。篠崎愛に似てかわいい子だったのですが、「彼女も飲みたいって言ってるよ、お酒好きな子で」と追い打ちをかけられ、飲みに行くことになってしまいました。彼と篠崎愛似の彼女と、赤羽で飲んだのですが、本当に楽しかったです。彼は全部奢ってくれて、終電逃すくらいまで盛り上げて直前で帰るという最高のお膳立てをしてくれました。その飲み会で知ったのは、彼女はネットワーク関係の人ではなく、飲み会大好きです出会いを求めている幼稚園の先生らしく、私は酔っ払ったふりをして甘えていた気もしますし、とりあえず楽しい夜でした。そんな弱みを握るに握られ、借りを大いに作ってしまったのち、十数万円の浄水器を買い、今でも私はその浄水器を通った水を摂取しています。ネットワークビジネスの彼ではなく、彼女にやられたなぁと完敗した一件でした。彼女は『マルチの子』ではなかったんですが、かわいい子に営業受けたら敵わないなというか、たぶん女性に弱い自分が好きなんだと思います。江戸っ子に憧れがあって、江戸っ子はたぶん喧嘩っ早くて、宵越しの銭は持たなくて、そのうえ女性に弱いイメージなんです。本当に自分が愚かだなとは常々思うんですが、今日も濾過された水を飲んで仕事に向かおうと思います。