失われた時を求めて

読書に始まる自伝的ブログ

『餅』(岡本かの子、1933)

いくつかネタは温めているものの、重たくなってしまい貯めております。新たなネタ・気付きを得るために、青空文庫を漁っていると、目にとまったこの本に手を取りました。

 

正月、新婚の夫婦の会話をモチーフにした短い小説です。女中もおらず、新年の来客もないなかで、おかってで雑煮を作る妻、茶の間の七輪で餅を焼く旦那。そんな他愛もない会話の中で、旦那は妻に惚れた理由を述べる。短いながらも味わい深いそんな小説です。

 

「お前の生焼けの餅に妙に愛感を持たされてしまったんだ」

 

旦那は餅を焼きながら、初めて妻の実家で正月料理をご馳走担った際に、料理に馴れない妻に心惹かれたというエピソードをおもむろに語るのです。

 

自分しか気付けないその人の一面を、魅力として感じたとき、その人を愛するということであり、その人を愛せる自分を好きになる。

 

最近はいつも適当な軽口を叩いてばかりですが、この小説のように、鋭くエモいトークをしたいものです。

 

青空文庫『餅』

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