失われた時を求めて

読書に始まる自伝的ブログ

『成功哲学《誌上講座》1919-1923』(ナポレオン・ヒル、渡邉美樹監訳、2010)

有名なナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』の前に、雑誌上で連載していたものを書籍化したもので、渡邉美樹さんが訳を監修しているそうです。

保険の個人事業主をやっていたころ「人は変われる」や「引き寄せの法則」といった自己啓発の何かを勧められる機会は多く、一度は話を聴こうと思って色々な人から聞いたことを素直に受け止めながら、当時の私はどこか距離をとりつつあったと思います。

こういう含みのある箴言というのは、なんとなく頭の片隅に残るくらいがちょうどいいと思っていて、あるときふと思い出すというか腑に落ちるというか、「あの人がいっていたことはこういうことだったんだな」と心から納得することが来ると思っているというか体験しました。いまは心からナポレオン・ヒルも渡邉美樹さんも好きで尊敬していますし、言われて納得したことをすぐにやってみようと思うのは大切だと信じているので、改めて自分を振り返ってしっかりやろうと思うのです。

 

一方でこの本を読みながら思い返すのは、虎の威を借りるしょうもない奴らというか、こういった自己啓発を商売にしている半端ものたちの思い出で。

保険業時代には多く営業を受けましたし、彼等も悪い人ではないというか本当に信じてやっているケースも多いんですが、言葉で整理して表現しにくい気持ちの悪さがあるのです。マルチ商法で成功するとか100万円の自己啓発セミナーとかは、「誰もが嫌だと思うもので成功するようもがくことこそが、自己成長の第一歩である」的な考えで、20代で田舎からでてきたような右も左もわからない人たちを利用して商売しているので、「素直でいい奴だけど、気色悪い」人間が量産されてしまうのかなと思います。

いま振り返って思うのは、そういった人たちと会うハメになっていた自分が同じ穴の狢というか、似た考えで似た行動をとっていたからだと思いますし、人にそういった感情を感じる機会を持つ自分に対して危機感を持たねばならないなと思うのです。

 

最近、保険時代の同僚から紹介されたタカハシさんという人と会うことになって。私は保険屋時代の経験から理由なく人と会うことに抵抗がないのに加え、「すべての人が生きやすい世の中にしたい」という首を突っ込みたがりな性分からオッケーしましたが、なんとなく怪しさというかマルチオーラを感じました。ただ同僚も馬鹿でないというか、考えなしに変なことはしない人だとわかっているので会うことにしました。

結論として読みは半分あたりで、タカハシさんは(私が勝手につけた名前ですが)フリーランス症候群・ネットワーク症候群のひとで3社マルチを渡り歩いたのちに、勤め人になるもすぐに退職し、その会社の業務委託をしながらフリーランスで人材関係の仕事をしている(というかしたい)人で、人脈を求めて紹介で人と会っているようでした。フリーランス症候群・ネットワーク症候群とはなにかというと、働き方として自由なものを求める結果、通常のサラリーマン勤めができなくなるものです。全然悪くはないですし個人の自由ではありますが、言い訳がうまいというか自身のなさから攻撃的というか、まだあんまり定義を言葉として煮詰めていないですがそんな感じです。マルチの集会に一度でもいったことのある人はなんとなく共通了解を持ってると思うので、細かい議論は避けますが、タカハシさんはともかくそんな人でした。

タカハシさんは良い人なんですが、病的な嘘つきというか、図太く見えて嫌われることを怖がっているのかなと思いました。そこで紹介元の同僚の意図がなんとなくわかったというか、私をリトマス試験紙にしているか変化の呼び水にしたいのかどちらかなのかなと思いました。前者のリトマス試験紙とは、要はタカハシさんが信用できる人間か見極めてくれということです。私の思いとしては、いい人だし信用はできるけど、一緒に仕事はしたくないよなというか、人には見せられない、安心して紹介できないなという感覚です。後者の変化の呼び水とは、本当にタカハシさんを変えたいので、言いにくいことを刺して言ってやってほしいということです。ただこういう自身のない嘘つきタイプの人に刺すようなことを言った場合、結構尾をひくというか…私は良いんですが、紹介元の人にいくダメージが計り知れないので止めて、当たり障りのない会話をして帰りました。

読みは当たっていて元同僚の意図は前者に近く、「久しぶりに最近やたら連絡と紹介頼まれるから、何考えてるかわからんし本心を知りたいのと、カネコに当てたら面白いと思って」ということでした。

 

成功法則を武器に語る人たちに思うのは、私や他者に向ける攻撃性と同じくらいの厳しさで、それを自分自身に向けられていますかということで。

「自分がしてほしいと思うことは、何よりまず他人にそうしてあげることだ」

ナポレオン・ヒルが言っている通りで、まず自分の話を真剣に聴いてほしかったら先に他者の話を真剣に聞く、自分を好きになってほしかったら先に自分が相手を好きになる、Very Simpleなのです。

 

最後にその厳しい目を自分に向け、

「私は本当に自分のなりたい自分になれているか?」

と問い返す時間になりました。

たまに読み返すとこういったセルフチェックができていいものですね。