失われた時を求めて

読書に始まる自伝的ブログ

『ソニー再生』(平井 一夫、2021)

上司から「絶対に読んだ方がいい」と勧めていただいた本で、手に取りました。

読んでから思い出したのは、私はそもそも組織適正が0に近く、リーダーシップを採れるような人間ではないので、あまり面白くはありませんでした。文学部的な感性を持つ営業マンなので、人と人とがどう関係して、どう感じるかといったところに興味はありますし、本書でもそういう楽しさというか、飲み会で取引先の歴史を聞いているときの面白さはありました。ビジネスマン向けのハウツー本的な色彩が強いので、会社を変えたいとか出世したいとかのことに興味の持てない私には、本書の切り口が気に食わなかったのだと思います。

 

社長はソニーのエンターテインメント部門の出身で、PS2からPS3の話や、WALKMANiPodiPhoneに切り替わっていく時代の話が出てきて、私の中高の頃の世間の変化を供給側か知ることができたのは面白かったです。

 

中高生の頃を思い出すと、我が家は携帯電話は買い与えないという家でしたし、兄弟も多くお金もないのでゲーム機も数世代前のものしか導入されませんでした。当時はPSPモンハン2Gが大ブームで、茨城県民と同じくらい売れましたとCMで言ってた記憶がありますし、ちょっと貸してもらった気もします。

中2の頃はモンハン2Gが最盛期で、授業中にみんなやるから学年で集会所のザーバーが埋まるみたいなことが起きてた記憶があります。学級崩壊寸前のような学校でしたが、ゲームと漫画が豊富で楽しいクラスでした。

 

WALKMANについても当然持っていませんでしたが、私は父のお下がりのiPodをもらいました。バンドをやってた友達がいうには「WALKMANのほうがダンゼン音質がいい」とのことで、Appleなんて会社を当時は認識していなかったのもあって、若干の劣等感はありました。ただそもそもいつでも一人で音楽が聴けるということが、すごく嬉しかったです。始めて買ったCDはYUKIの「megaphonic」というアルバムでした。当時は父から借りたサザンとスピッツのアルバムに加えて、YUKI安室奈美恵がすごい好きでYUKIの「うれしくって抱きあうよ」と安室奈美恵の「PAST<FUTURE」はiPodに入れてすごい聴いてました。あとはPodcastというラジオをすごい聞いてました。家でダウンロードすれば聞けたので、爆笑問題のJUNKの短縮版、バイリンガルニュースや髭男爵のラジオを聴いてたこととか、忘れていたことをふと思い出しました。

 

ソニー関係でどうでもいいような中学生時代のワンシーンを色々思い出しましたが、当時の本や音楽といった自分の人生を変えたり支えてくれるようなエンターテインメントとの出会いは、本屋やCDショップでした。WALKMANiPodが生まれても、保管して持ち歩きいつでも呼び出せるようにするツールでしかなかったです。いまはSpotifyYouTubeで聴いたり観たいシーンをいつでも呼び出せますし、tiktokで知った音楽は15秒の世界です。

中世の頃の人間が一生をかけて知りうる情報は現代の新聞の朝刊一冊分ほどだったと聞きますが、この10年くらいでも世の中がどんどん加速しているように思います。

情報をインプットして誰かにアウトプットすることをコミュニケーションと呼ぶとすると、コミュニケーションが加速するなかで良いことはいっぱいあるし、それがなければ進歩もないし今の便利な世の中もないわけです。飛脚を飛ばしたり、電報を飛ばす必要もないし、情報をアウトプットする利便性の高い良い時代です。ただ人間の脳は進化していないので、加速するインプットに疲れるし、アウトプットを生み出す処理速度も速くはならないと思うのです。

色々昔のことを思い出したり急に語ったりで、何が言いたいのかというと、日曜日にtiktokYouTubeInstagramを起動し続けているとジャンクなデータ処理で脳が疲れるから、「全く何もしないでぼーっとする時間」って脳のために大切だよなということを思った次第です。