『ナニワ金融道』(青木雄二、1990-1996)
これから不動産屋になるという大学4年生から「入社前にどんな本を読めばいいですか?」という相談を受けました。この質問、昔は自分もしてしまっていた気がしますが、されると困るものですね。
読みたい本というのは、自分が欲するときに出会い読もうと思う本だと思いますし、或いは自分を相手にあてはめて自分が同じ年のころに出会った本のなかで”くらった”ものを出しても、それが相手にとって役立つとも限らないし…その大学生に営業論の本を読ませてもちょっと早いというか「まずは現場でやってみんしゃい」だし、出会う経営者が好きそうな『生き方』は私から勧められて出会う
のは違う気がするし、私自身が当時食らった哲学・経済学・社会学系の一般書もたぶん読めないだろうし…
そんなことを考えていたら、ふと『ナニワ金融道』を思い出したのです。
しかもkindleで買っても全巻2000円もしないし、私も久しぶりに読みたくなって大人買いしてしまいました。大人になって現場で働いて読むと、より一層面白いですね。
バブル~バブル崩壊後のナニワの街金の物語です。私は実家の父の本棚にあったので、中学生の頃に読みました。そこから金融マンや不動産屋へのあこがれというか、「生きるには金だ」「金の切れ目が縁の切れ目」という非情さと「とはいっても責任は取りまっせ」「家族は何が何でも食わすんや」という人情が同居した大人の世界にあこがれを持っていました。
私は2019卒世代で、令和が始まり、リーマンの傷も癒えつつあり、「まあ失われた30年で景気は良くはないけど、アベノミクスで儲かってる人もいる」みたいな時代でした。総量規制もはるか昔に施行され、アイフル以外のサラ金は銀行の傘下に、金貸しは冬の時代でした。それで保険屋になろうと思ったのですが、保険屋は男は営業ではなく女性の募集人を管理するだけの仕事で「まあそれも仕方ないな」、面白くないなと思ってた最中にやんちゃな不動産屋と出会い、私は不動産屋になったのです。
不動産屋も新卒当時は面白く、桑田や高山部長のようなパワハラ遺物系の先輩がおり、”令和版”の理詰め電話グルグルテレアポと飛び込みで、コミュ障の人見知りは1か月程度で完治しました。ナニワ金融道の吉村も、司法書士を目指す真面目でコミュ障の青年も、すぐに嫌な営業マンに成り代わっていましたが、そんな新人時代です。あと私も灰原と同様、会社の管理物件の屋上の小屋に住んでいまして、昔の世代でいうと『傷だらけの天使』みたいだなと言われますし、最近だと『九条の大罪』みたいな小屋に住んでいました。本当にぼろい家でした。懐かしいですね。
その後、コロナショックや諸々でパワハラ遺物系の先輩たちは辞め、面白くなくなったときにフルコミ保険セールスの勧誘を受け、刺激を求めて保険屋になったのです。保険屋の話はよくブログにしている気がするので、割愛します。
その後、まさに地上げ屋という人と出会い、不動産屋に戻りました。地上げもバブルの遺物・時代遅れの仕事だというイメージだったのですが、いまでも地上げ屋という仕事が残っていて、まさか自分が地上げ屋になって肉欲棒太郎と同じ道をたどるとは思いもしませんでした。
『ナニワ金融道』のような人生を送りつつあるこの頃、私も灰原の新人時代の28歳と同じ年齢になってしまいました。「大阪一の金融マンになる」という灰原の気持ちも、22歳の頃は持っていました。そんな気持ちを忘れてしまっていましたので、今日からは仕事にギアを上げて「日本一の不動産屋」目指して頑張ろうと思います。
金畑社長が灰原の独立に対して言葉をかけるシーンも印象的で、「人に輝かされる月になるな、自ら輝く太陽になれ」といった言葉をかけるのですが、要は「金主なくして社長になれ」ということなのですが、いまになって読むとハッとさせられます。不動産屋で独立する人は、仲介から初めて元手の少ない仲介料ビジネスをするパターンと、金主から出資を受けて買取再販を始めるパターンがあります。どちらも正解だとは思うのですが、「一生を金主に頼る経営をするな」という金畑社長の哲学を知り、自分の今後も考えんとなと思いいたった次第です。
ちなみに本書を勧めた大学生の彼も高まったみたいで、仕事はじめに向け燃えているようです。全国の不動産屋・金融屋のデビュー前に勧めるのに最適な本は、『ナニワ金融道』で決まりですね。
あといっぱい続編が出ているのを見つけたので、色々読んでみようと思います。



