最近はYouTube効果で、脱北者の方のお話を知る機会があり、それきっかけで本を読むことが多いです。その一連で出会った本です。
著者はいわゆる帰国者で、少し前に書いた川崎栄子さんと同様に、日本生まれ日本育ちの在日朝鮮人でしたが、帰国事業に騙されて北朝鮮に渡った方です。祖父とともに北朝鮮に渡りましたが、祖父が朝鮮総連で地位の高い人であったので、北朝鮮のなかでは比較的良い出身成分で、大学まで出て、作家を目指すという経歴を経た方です。脱北していまは韓国にお住まいです。
『暗闇のトンネル』(川崎栄子、2021) - 失われた時を求めて
そもそも北朝鮮における作家というのは、思想の宣伝工作によって革命の最前線に立つ”文芸戦士”であるのです。指導部の思想や北朝鮮文学に詳しい著者の話はどれも知らない新鮮な話で面白かったのですが、一番印象的だったのは、”主体(チュチェ)思想”と”独裁主義”の両立に関する解説でした。
チュチェ思想とは「自分の運命の主人は自分自身であり、その運命を開拓するのも自分自身である」という人間中心の哲学思想である。古来からあった「神」の存在を前提とする観念的世界観とも、物質中心の唯物的世界観とも違う”新たな”世界観として、北朝鮮が独自に”発見した”思想なのだという。
(……中略……)
この理論からすれば、あの国の人たちは自分の運命をすべて自由に動かし、なんでもかんでもやりたい放題にできるはずだが、その現実は、まったく違う。
「チュチェ思想」という考え方があることはすでに述べた通りだ。金日成氏はこれに「革命と建設の主人は人民大衆であり、革命と建設を推進するのも人民大衆である」と、つけ加えている。つまり、単なる社会主義というだけでなく、その人民の行動は常に南北統一、朝鮮建国のために行うことであるというわけだ。
のちに金日成氏が、これを達成するための具体的な指針として「政治の自主」「経済の自立」「国防の自衛」の3つを打ち出しまとめたのが、「チュチェ思想」改め「金日成主義」である。日本の皆さんにはいまいちピンと来ないだろうが、簡単に言ってしまえば、何をするにも革命を成功させるため、金王朝を支えるための行いをしろ、ということだ。
平等な社会を目指したソ連でも革命を率いるにはエリート独裁になり、エリート独裁は猜疑心を産み、崩壊していきました。私はカール・マルクスになりたかった男でしたが、カール・マルクスの『共産党宣言』には賛成しないというか、若気の至り的な書物なのではないかと思っています。その後私は『資本論』に影響を受けて、大学の歴史学科に進んでしまうわけです。価値について、価値と価値の交換について、そして人間について、なにかを証明し、それを社会に提示して良い方向に変えたかった訳です。結論何もわからなかったので、せめて身の周りの人には良い影響を与え、少しでも生きやすい世の中であってほしいなと願って生きています。
今回の北朝鮮の話もソ連の話に戻ると、膨大な数の人間集団を束ねるということは、人間が扱うには難しいことなのだと思います。せいぜい50名程度のサルの群れ、バンドが巨大な社会を作ってしまうと、誰もが幸せになるのは無理なのです。顔も知らない人のために頑張ったり、気遣いあったりするのは難しいのです。そう考えると、古代のころの粗野な社会よりは、いまのの日本は幸せなのだと思います。指導者の悪口を言っても死刑にならないですし、毎日食べるものに困って死ぬこともないのです。すべての国が不完全で、人間集団を束ねるにあたって欠点があるという点はあれど、北朝鮮は欠点が大きすぎるし、やっぱり滅びるべきだと思います。多くの国民が苦しんでいるという当然の問題もありますが、金正恩や指導者層もやっぱり猜疑心と重圧に苦しんでいるのではないかなとは思うのです。だからあんなに酒を飲んで太り、部下を処刑して、ミサイルで外国を威圧しているのかなと思うのです。金正恩もプーチンももう死んでいて影武者で、おこぼれをもらっている連中が、必死に体制を維持しているだけかもしれないですが。ともあれ平和な世の中であってほしいものです。
最後に全然関係ないのですが、小さいころ私はカエルが大好きで、NEOという小学館の絵が大きいカエルの図鑑をよく読んでいました。一般の人よりカエルを見分ける力はあると思うのですが、表紙のカエルは見たことのなかったです。アカメアマガエルみたいな見た目でかわいいですね。