『愛しのアイリーン』(新井英樹、1995~1996)
最近は暑すぎて何も起きません。何もする気が起きないが故に、頑張って予定を入れて、その約束を履行することでなんとか社会生活を維持しています。
最近、たぬかなの配信をずっとラジオみたいにかけてて、そこで話題になってて面白そうで手に取りました。KindleとかLINE漫画でもセールで安かったのもあって衝動買いしてしまいました。
田舎の農家の一人息子の岩男が主人公で、40代にして独身・非モテの大男です。岩男はパチンコ屋の店員で、パチンコ屋の事務員のおばちゃんや若いシングルマザーの店員と関係があったりなかったりして、そもそも童貞ではないですが心根が童貞で拗らせに拗らせています。「お……おま…………おまんごーーー」のシーンを配信で聞いてみたかったので読みましたが、岩男を表すシーンで、人から受け入れられたことがないという認知の歪みからくる狂ひが表れています。
その後フィリピンにいって、300万円を払ってフィリピンの若い娘アイリーンを奥さんにもらいます。時代背景もいまと違うなかで、さらに田舎の農村でフィリピンの日本語も話せない若い奥さんをもらうことへの偏見はすさまじく、また親自身も一人息子に対して歪んだ愛をもっており、軋轢から様々な事件が起きていきます……という話です。
私も人のことは言えない歪み野郎ではありますが、最近心配になる身の回りの歪み野郎たちを心配に思わせてくれる読書体験でした。
私は何度かブログで書いていると思いますが、ラグビーと読書と居酒屋バイトで人生救われていると感じています。イケてない高校生活でも、余計なことを考えられないくらい体力を削られていたこと、その後自分のイケてなさを自己流の変な考えで歪ませる前に哲学・心理学など様々な本を吸収してちゃんと客観視して処理したこと。その後大学で居酒屋バイトをして社会性を教えてもらい、酒を飲んで自己開示をするのが得意になり、歪みが矯正されていったように思います。大学デビューとまではいかなかったですが、心根童貞野郎を軟着陸する形で脱却できた次第です。
ただ大学は田舎の国立の文学部かつサークルは演劇系という社会性の低いやつを濃縮した環境にいたため、まだ歪み続けて変な方向に向かってしまっている連中が多いです。別に彼・彼女たちの人生なのでどうでもいいはいいんですが、少し心配になるというか、その難しい論理で歪めた認知では幸せに生きられないと思うし、もっと自分とか人と向き合って、人とか環境のせいにするのをやめて、自分の恥ずかしさとか他者の愚かさを笑って乗り越えられると、たぶん生きやすいのかなと思うのです。
この本を読んだ結果、たまたまジェットスターのセールでフィリピン行の飛行機のセールで買えて、マニラに行ってこようと思います。いまは日本人が殺されたり物騒ではありますが、死なないように安全なエリアでGrab移動オンリー・昼間縛りで空気をとりあえず吸ってこようと思います。本記事が遺言にならぬように、神に祈って飛び立ってまいります。
『君主論』(マキャヴェッリ、1532年)
いま色々と整理してまして、本とか服を処分したり買いましたりしています。高校のときに読んで、8度の引っ越しを経てまだ手元にあるので、良い本なのかたまたま残ったのかわからないですが、とりあえずまだ家にあることを認知しました。
中学の頃は塩野七生さんの『ローマ人の物語』が流行っていて、父がよく図書館で借りていたので、それを私も拝借して読んでおりました。その一環で『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』も読んで、マキャヴッェリ『君主論』にも行きついた形です。当時私は中二病全盛期で、あらゆる人間の行為を数値化して証明したいなという思いがありました。だからあらゆる哲学とか経済学の本を読んで、マルクスになろうと思ったし、脳科学とか生物学とかの話にも興味を持って読んでいた次第です。
そんなリアル中二病の当時に読んだときは感動したのが本書です。人間や人間集団をどう御して、どう世の中を幸福にするかということばかり考えていた私です。当時は『ローマ人の物語』の影響もあり、圧倒的なリーダーシップによる寡頭政や君主制、そのリーダーや君主における騎士道・武士道的な道徳的規範などにとても興味があって、『君主論』以外だと『武士道』とかもすごい好きで、何度か読み返した記憶もあります。
いま読み返すと、君主に献上する実践の本であり、学術的な正確性や証明に紙幅を割いていないということにまず気づきました。
本書では「人間とは〇〇である、故に君主とはかくあるべきである」という構成で各論が進みます。例えば私のざっくり要約ですが、下記のようなイメージです。
「人は些細な侮辱に対しては復讐しようとするが、大きな侮辱に関しては復讐しえないものである。故に、民衆というものは頭を撫でるか、消してしまうべきである。人に危害を加えるときは、復讐の恐れがないように行わなければならない。」
「人は意志が弱く邪悪なものである、故に愛される君主より、恐れられる君主を目指すべきである」
「運は変化するものである。そこで、人が自己流のやり方に固執すれば運と人の行き方とが合致する場合においては成功するものの、不一致の場合においては、不幸な結末をみるのである。故に、私は用意周到であるよりはむしろ果断に進む方がよいと考えている。」
※引用ではなくざっくり要約。
そもそも『ローマ人の物語』もそうですが、中学生当時の私はロマン主義的な頭であったなと思います。感性の生き物といいますか、データ的な正しさを検証することを経ずに、より直感で生きていたように思います。当時に陰謀論やポピュリズム政党が流行っていたら、たぶんハマっていた気がします。『君主論』も同様で、29歳の現在に読んでも人間に対する示唆もあるし、学びもあるなとは思うのですが、いまの自分にはやや物足りない感じがするというか、中学生のときのくらい方はできなかったです。当然に500年前からの人間の変わらなさを得られる面白さもありますが。
昔の良い思い出を思い出せましたが、次の引っ越しを目指して本書とはお別れしようと思います。また15歳の次なる少年が手に取ることを祈ります。
『いま、お金について知っておきたい6つの教え』(本田健、2023年)
今日はスピリチュアル・フェスティバルというイベントに参加してきました。知り合いの社長が好きで、去年に引き続き一緒に伺って二度目の参加でした。いく前は「ちょっと面倒だな」という気持ちではあるのですが、今回も良い学びがありました。今年は望月俊孝さんと本田健さんの講演会に参加しまして、転職の合間ですし、自分を見つめなおして、色々と修正していこうという良いモードになるスイッチが入っています。
そういえば去年もネタ半分、付き合い半分で参加しましたが、そこで聞いた話の影響で九頭竜神社に行ってから、仕事の成果が爆発し始めたので、何か良い引き寄せというか人生を見つめなおしてお世話になった人たちに感謝して、やるべきことを修正していく契機になって、運気もよくなっている気がします。
話を今年に戻すと、本田健さんは「念ずれば通ず」という引き寄せの元祖のような方だそうですが、今回のセミナーもそんな話でした。出会う時期が大事という面もあり、「そういえばこんな良いことあったな」「そういえばあんなことをしたいと思ってたけどできてなかったな」なんて考える機会になり、とてもいい刺激になりました。終わった後に本を2冊買ったのですが、そのうちの1冊が本書です。
本書の内容は、『金持ち父さん貧乏父さん』を現代の文脈で再度整理しケーススタディを交えて実践的に説明するような内容です。また経済学的な効用を個人の側面に落とし込み、人間関係やお金との関係についても、具体例を交えながら解説する内容です。そんな話を意図している本ではないので私の要約がよくないですが、私は心から本書を読んでよかったと思っていますし、いつ出会うかも大事で、今回のセミナーを経た刺激と相まって、エコノミックアニマルになりつつある私に自分を見つめなおす機会をくれる読書体験となりました。
知っていることとやることは全く異なる話で、「お前やれているかい?」ということを、突きつけられるような時間でしたし、結果「やれてないな…25歳から5年間は惰性でうまくいってたけど、これから進む方向決めなおさないと迷走してしまうな」と思い至りました。ちょっと立ち止まれる転職の合間のいまのうちに、色々言語化して、行動を決めて、習慣を形成しなおしたいなと思います。
そういえば、巻末の作者の作品一覧をみて、そういえば著者の作品は21歳の頃の”就活もとい人生どうしよう期”に読んだことを思い出しました。その話はいつかするかもしれないですし、しないかもしれないですが、思い出したので備忘録として残しておきます。
『狂四郎2030』(徳弘正也、1997〜2004)
最近マンガ愛が再熱してまして、LINEマンガの手軽さに加え、たぶん中高生のときにパソコンから買ってたeBookJapanのアカウントも復活して、暇あればマンガばかり読んでます。
ディストピアの近未来の日本が舞台となる話で、優生主義・全体主義の独裁政権下の世界、男女が隔離され、ほとんどの人は農奴のような暮らしをしています。男女が隔離された日本人は、何人かに1台の割合でバーチャルセックスマシーンをあてがわれ、悲惨な現実をバーチャル世界で癒してなんとか暮らしています。そんな過酷な世界で、男女がなんとか会おうとする話です。男の名は狂四郎、戦時中はエリート軍人で、戦後は治安維持の警官を務めます。女の名は志乃、バーチャルセックスマシーンから農場の生産管理まで受け持つエリートエンジニアです。全体主義と差別と暴力の蔓延る超管理社会で2人が会える確率は0に近いです。そんな2人の大冒険を描いた作品です。
カレーのネットミームの元ネタでもありますが、このシーンも結構悲しいシーンです。全体的にバカなノリも多いけれど、基本的にやっぱり過酷だし悲しい物語です。
「今日はカレーライス全員食っていいのか!!」
「ああ…しっかり食え。おかわりもいいぞ!」
全体主義・自己責任論・優生主義…これらは過去の思想に見えて、いまや世界の先進国もポピュリズム政党が躍進し、こういった思想を復活させています。本作でも、敵とされる独裁者側の人を吊るし上げた後、また共通の敵を作って同じような仕組みが維持され続けるシーンが多く出てきます。政治的な無関心はよくないと思うけれど、結局政治の本質というか政治が自分たちに影響する力や政治を変える労力を考慮すると、自分や愛する人が幸せになるように行動するのが精一杯なのかなとか思ったりもします。霊長類は150匹程度の群れが限界だみたいな話を聞いたことがありますが、一億人を超える民主国家というものはヒトにはもてあましてしまうのもなのかもしれないです。
『グレート・ギャツビー』(フィッツジェラルド、1925)
積読の本でしたが、時間にゆとりができ、感性的な本を読む気持ちが生じたので手に取りました。
読み終わった俯瞰で内容を要約すると、第一次世界大戦後のアメリカの心理的な分断を表している側面があり、西海岸の伝統を重んじるウェットな”アメリカ”と、東海岸の当時の最先端の経済を担いつつもドライな”アメリカ”、その変化の時代を生きる皆の姿を描いた面があります。
いまにして思えばえば、この話は、けっきょく西部の物語であった――トムもギャツビーも、デイズィもジョーダンも、それからぼくもみんな西部人である。そしてぼくたちはたぶん、ぼくたちを東部の生活になんとなく適合できなくさせる、何か共通の欠陥を持っていたのだろうと思う。
一方でジュブナイル小説のような純粋な恋心の美しさを描きつつ、その裏返しの気持ち悪さも同時に描いた作品であるなと思います。
ギャツビー、僕が心からの軽蔑を抱いているすべてのものを一身に体現しているような男。
ギャツビーという人間にはなんか絢爛とした個性があった。人生の希望に対する高度の感受性――(中略)――それは希望を見出す非凡な才能であり、ぼくが他の人の中にはこれまで見たことがなく、これからも二度と見いだせそうにないようなロマン的心情だった。そうだ――最後になってみれば、ギャツビーにはなんの問題もなかったのだ
私たちはどうしたって過去を美化してしまうというか、若さ故に他人に対する鋭敏な興味に基づいて想像力を発揮してしまい、一方でその想像力が故に他者との不理解を引き起こしていることに気付かない。当然に本作のように、各人が歳を重ねる毎に、同時に財産や社会的な背景などを積み重ね、それが”純粋な”心の判断に影響を与えてしまうから、若いということはそういったしがらみのなさを表すことになります。またそもそも過去の意志決定を美化しようとする脳の働きがあるというか、意味を後付けで設定してしまっていることもあります。だから過去には勝てないというか、過去の思い出を宝物みたいに大事にしまって、時折愛でてしまうのです。
こうしてぼくたちは、絶えず過去へ過去へと運びさられながらも、流れにさからう船のように、力の限り漕ぎ進んでゆく。
自身の過去の美しさとキモさ、それに向き合うのが本ブログの趣旨であり、『グレート・ギャツビー』はそんな要素に強制的に向き合わせる読書体験でした。本作は第一次世界大戦後の荒れた世の中のなかで、過去に向き合う者・現実に向き合い変化する物を描いていますが、現代社会とまさに同じ流れなのかなと思います。変化し続ける世の中で生きにくさを感じ、不都合な現実を変えてくれる”伝統”としての美しい過去を美化して掲げ自身と同一化する動きが生じ、トランプや参政党などのポピュリズム政党が台頭しています。世の中を変えようとするのは当然に大事なのだけれど、変化する世の中で、自分自身の弱さとかキモさと向き合って、一方で美しさも見つめて自分を鼓舞し、自らの脚で立つのが重要なのかなと思いました。本作だとデイズィがたぶん一番そんなスタンスの女性で、過去の自分を愛でつつも、今の自分も愛し、”力の限り漕ぎ進む”生き方なのかなと思います。それが幸せなのかはわからないけれど、今後10年100年と人生が続くとしたら、ジュブナイルの綺麗な思い出を愛でるだけでは生きられないし、一方で未来へ漕ぎ続けるだけでも病んでしまうし、都合よく両立した結果一番幸せなのかなと思います。
「あたしはいま、あなた(=ギャツビー)を愛してる――それで十分じゃない?過ぎたことはどうしようもないわ」彼女(=デイズィ)は頼りなさそうにすすり泣きはじめた。「かつてはトムを愛してた――でもあなたのことも愛してた」
ギャツビーの眼は開いて、閉じた。





