長らく積読でしたが、この前読み始めたら面白すぎて止まらず読み切りましたが、ブログを書くスイッチが入らず、入れられず、久しぶりに文学少年モードで書こうかなと思い立った次第です。
2巻は、梶と中国人労働者や同僚或いは美代子との関わりのなかで、ついに仕事で抱える矛盾に耐え切れず波乱を起こしていく物語となっております。
この巻で一番印象的で衝撃だったのは、インテリ中国人労働者の王享立の手記です。約10ページにわたり漢字+カタカナで書かれた手記は、自身や仲間の労働環境の現実をつまびらかに誇張することなく伝えるものでありますが、その現実が衝撃で、胸をえぐり、頭を揺らすものでした。
まさに「人間の條件」。人間を人間たらしめるのに必要なもの、それは尊厳なのか、食事なのか、睡眠なのか、性なのか、あらゆる側面から手記は分析を加えますが、ともかくもその環境は、人間を動物にする、人間でなくするには最適で最も効率の良い方法であるのです。
手記の最後は
「私ハ日本人管理者ガ私に紙ト鉛筆ヲ与エテクレタコトヲ深謝シマス。紙ト鉛筆ヲ手ニエイテイル限リ、私ハマダ人間でアルコトヲ私自身モ他人モ認メルデショウ。ケレドモ、コウ書イテイルウチニ、既ニ紙ノ余白ガナクナリマシタ。コレハ、ツマリ、人間トシテノ条件ノ儚イ限界ヲ示シテイルコトデス」
と締めくくられます。
私が今生きる環境は真逆で、自由を謳歌できて、むしろ食にあふれており、人間を人間たらしめることができるのです。
しかし油断すると人間を人間として生きられていないような気もして。寝て起きて、寝て起きて、死なないためにパンを食べて、スマホの変わりゆく画面を眺めて。死ぬ可能性はないし、幸せで平和な人生なのかもしれないけれども。人間を人間とするのは、王の手記にある通り、考える力であるのかなと思います。
自由な思想や思考で考えることができる世の中なのに、気付くと考えを放棄していることも多くて。
個人事業主からサラリーマンに戻ってわかるのは、別に頑張っても頑張らなくても変わらない環境で、考えても考えなくても変わらないような気がするんだけど。
それは全ての放棄で、人間を人間たらしめる未来を考え語る力を発揮できてないでももったいない気がして。
死んでるように生きることのないよう、濃密に考えて時間を過ごそう。せめて今日くらいは。