失われた時を求めて

読書に始まる自伝的ブログ

『自分の中に毒を持て』(岡本太郎、1993)

家の掃除をしていたら見つけて久しぶりに手を取りました。新装版の第14刷で2020年6月のものだったので、社会人2年目でコロナ真っ最中の夏に出会ったことを思い出しました。当時の記憶はあまり鮮明ではありませんでしたが、この本を買ったときのこととかも思い出してとてもリアルに迫ってきました。

当時は不動産の仕事をしていましたが本当に暇で「このままでいいのかな?」みたいな思いが強く、迷走を極めていたように思います。若いうちは沢山のチャレンジをして、辛い経験とかも乗り越えていくような修行の期間だという認識があったので、こんなに暇で尊敬する上司から辞めていっていく会社でうずうずしていたのです。そんな中でとりあえずFPの2級を取ったり、本屋で気になる本を手にとって読んだりしていました。また大学の一人暮らしを経て、社会人一年目は実家に戻っていましたが、環境を変えようと思って一人暮らしを始めた時期でした。東京都中央区京橋のボロボロのペントハウスで、家賃は5万円でした。

 

読んだ当時はすごく衝撃を受けたことを思い出して、自分らしさって結局は自分の内面に深く向き合うなかで自ら見つけるもので、そのためには過去や常識を捨て必死にやらねばならんよねみたいなことを思った気がします。それは今だと改めて考えるまでもなく当たり前のことなんですが、当時は自分らしさは他人から与えられるというか、他者と生きる社会のなかでどう強みを発揮するかみたいな感覚だったので、この感覚を壊してくれたのはいま思うと岡本太郎さんだったと思います。

 

言葉で「命を懸ける」とか「必死でやる」っていうのは簡単ですが、それを実践するのは難しいなと思い、環境を変えようと思って保険屋の個人事業主になったのもそれから半年後の2020年の12月です。その後の1年半は本当にきつかったんですが、そのときの経験があっていまの自分があるなと確信しています。

 

いま『自分の中に毒を持て』を読んでも正直あまり心に刺さるものはなかったのですが、きっと人生出会うべきタイミングで出会うべき人、そして過去の人の言葉としての書籍に出会うのかなと思う次第です。