失われた時を求めて

読書に始まる自伝的ブログ

『ゾウの時間ネズミの時間ーーサイズの生物学』(本川達雄、1992)

最近ジムに通い始めました。

前段として、ここ1年で10kg太ってしまって、何かと身体が辛いというところの緩和策として、ランニングとバスケを始めました。ところがバスケで膝の靭帯の古傷を開いてしまい、運動する方策を見失い、上半身を鍛えたり、膝への負担が軽い有酸素運動を取り入れたいという気持ちで契約したものです。

ジムのクロストレーナーという機械が面白く、1日30分くらいやっています。ただ難点としては、景色が変わらず暇で、ラジオを聴きながら、心拍数と消費カロリーを眺めるだけです。

心拍数をずっと見ていて思い出したのがこの本で、帰りに近くのブックオフで立ち読みしました。小学生のときに、父の本棚で見つけて読んだ記憶があります。

生物の心臓の鼓動は一生のうちに8億回くらいで、寿命と体の大きさはは比例するということから、生物にまつわる「時間」は体重の4分の1乗に比例することになるという話です。

小学生当時も過去のベストセラーだったみたいなことを聴いて読んだ気がして、1992年の本だったんですね。『ロウソクの科学』とか『バカの壁』とか、新書はタイトルが興味を引くようになってて、面白そうですよね。小学生の心に響いて、たくさん読んだことを思い出しました。歴史小説もそうですが、父が家に置いてあった本たちに育てられてきた幼年期だった気がします。カエルと宇宙めちゃくちゃ好きで、図鑑も読み込んでいた気がします。あとは『ホーキング宇宙を語る』は難しすぎて、高校の頃に読んだことも思い出しました。そんな実家の本たちは引越しに伴って捨てられてしまったのでしょうか。そんなことを考えると寂しい気もします。

 

話を現在に戻して、ジムで有酸素運動をしながらこの本を読んで、健康のために行っているこの行為は、私の寿命を削っているのではないかという疑問が湧いてきました。土手でランニングしているときは、走ることによるアドレナリンによる脳の興奮や、身体の血が巡ることによる高揚が、心地よさを演出しておりました。しかしジムでまざまざと心拍数が高い水準を行き来している様を見せつけられます。推奨される有酸素運動の120BPMを遥かに超え、160BPMを刻んでいます。HIITトレーニング的にはカロリーを多く早く消費しているから良いのかもしれません。しかし私は通常の心拍数は遅くて、70BPM前後ですし、2倍以上のスピードで心拍数を”消費”しているのです。「ゾウ並の体格だが、ネズミのビートを刻んで生き急いでいるな」と思いながら脚を動かすのです。椎名林檎の『閃光少女』の歌詞が頭をよぎります。

焼き付いてよ、一瞬の光で

またとないいのちを

使い切っていくから

健康のための運動で命を削っている矛盾への疑問を、芸術的な官能への直接的な刺激で沈めて、今日も走るのです。

 

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