「モノを買うということは、価値と価値の交換である」
そんなことを保険募集人の頃に教わりました。無形商材で、高額で、そして納品は亡くなったあと自分以外の誰かにされる。こんなに価値の伝えにくいものはないが、国民のほとんどがいつかは購入するのです。どうやったら売れるようになって、仕事が続けられるか考えてたけども、結局続けられませんでした。私の保険を引き継いだ人たちも辞めていっていくし、「ほとんどの人が辞めていく世界だ」なんて自己肯定することもできるんだけれども、売れ続けている人がいることも事実です。
私の営業マンとしてのバイブルであるジョー・ジラード『私に売れないモノはない!』を読みながら、暗く小難しいことを考え、出口のない迷宮に迷い込んでおりました。
そんな暗い気持ちを晴らすために一人で居酒屋に入ります。チェーンの居酒屋で、私が大学の頃にバイトしていた系列店です。居酒屋はやっぱり最高で、幸せな浮かれた人たちの発するハレの空気を吸うと、暗い気持ちは消え失せ、「明日も頑張ろ」と切り替えられる訳です。
ところで思うに、営業と接客は違うものです。
営業は、お客さんの未来の感情と勘定をより良くするために、現在時点ではお客さんに多少の心理的な負担を伴ったとしても、決断を迫る必要があります。しかし反対に、接客は、現在の感情をより良くするだけでよいのです。しかし、接客を商売として切りこんでいって考えると、お客さんには財布を緩めてもらう必要があります。単価をあげるか数を増やすかですが、お客さんにはハレの気持ちで盛大に使いたいなとか、カッコつけたいなとか、お金を払いたいな・払ってもいいなと思ってもらう必要があるのです
そんな風にして良い接客について考えてると、大学生の頃に居酒屋のバイトをしていたことを思い出します。チェーンの大衆居酒屋でしたが、皆若い社員で楽しかったですし、色んなことを教えてもらいました。
当時の店長は、その会社の女性の最年少店長でした。店長は気遣いの人で、人との間合いの取り方は盗みみたり教えてもらったりで学ばせてもらいました。私は居酒屋という空間がすごい好きで、友達と久しぶりに再会して楽しく飲んでいたり、同僚と愚痴や未来を語ったり、一次会抜け出して微妙な間合いで口説いてる男女がいたり、子供がはしゃいでたり…とにかく居酒屋でしか接種できないエモく明るく楽しい空気があるのです。そこで色々なシチュエーションのお客さんの邪魔をせず、気兼ねなく語ってもらうために、気遣いというものが重要になってくると学びました。いまでも店長からの金言として心に残っているのはこんな言葉です。
「あんまりサービスをやりすぎないほうが良い。お客さんが帰って寝るときに、『今日の店はいい店だったな』と思うぐらいが最高の接客だ。」
いまでもたまに思い出して、自分の行いを振り返りたす。
また副店長も女性で若手でした。副店長はとにかく明るい人でした。根が明るいというのもありますが、自分が明るくしてスタッフやお客さんに良い影響を与えたいということも仰っていました。私は根暗なので、気を抜くとスイッチが切れた感じになってしまうのですが、当時の副店長や明るい人をみると、襟を正したような気分になります。誰だって暗い人より、明るい人といた方が楽しいですし、特に居酒屋という空間ではなおさらだったとおもいます。
19歳の初バイトという若い頃に出逢った二人ですが、そのお陰でいまがあるなと思うのです。気遣いと明るさと、そんなことは居酒屋から教えてもらいました。
営業も接客も奥が深いなと、そんなことを考える日曜日。明日も頑張ろうと思うのです。
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